「スチコン」という厨房機器をご存知でしょうか?
実は近年、コロナウィルスの影響もあり飲食店は業態転換を迫られる中、スチコンへの注目度は益々大きくなっています。
・「固定費を減らして経営を改善したい!」
・「人手不足をなんとかしたい…」
・「通販やデリバリーを始めたい!けど何から始めたらいいのかわからない…」
このような飲食店経営者の方たちが、経営改善の切り札として着目しているのが「スチコン」なのです。
食品業界にとって数十年に一度の過酷な状況だからこそ、スチコンについて知らないのはリスクや機会損失になるかも…
この記事では、飲食店経営の可能性を大きく広げると言われているスチコンについて、スチコンを徹底して比較研究してきた当サイトがイチから丁寧に解説していきます。
最後まで読んでこのような疑問を解消し、スチコンの導入や経営改善の参考にして下さい!
目次
1. 定義から特徴、メリットまで!
1-1. スチコンとは?
スチコンとは、「スチームコンベクションオーブン」の略称です。
オーブンとスチームを組み合わせた機能を持ち、熱風と蒸気(スチーム)であらゆる加熱調理を可能にします。
「蒸す」「焼く」「煮る」「炒める」「温める」「茹でる」(※)「揚げる」(※)など加熱調理の90%ほどをたった1台で実現できます。
そのため、飲食店の多種多様な課題を解決する機器として注目度が高まっています。
例えるなら「加熱調理の何でも屋」と言えるでしょう。
※一部調理できないレシピが存在します
1-2. スチコンの特徴とは?
スチコンの特徴は実に多様ですが、提供品質についての特徴と調理効率についての特徴とに分けてご説明します。
1-2-1. 提供品質について
特徴①:プロのシェフのような高クオリティ
通常のオーブンでは「焼き上がり時の食品が乾燥してしまう」「温度調節が難しい」などの問題点があります。
しかしスチコンは、熱風に加え蒸気(スチーム)を吹きかける点で通常のオーブンと異なります。
よって「熱が伝わりやすいので短時間で高温で焼き上げられる」「食品の水分を保ちパサつきを抑えられる」「温度・蒸気(スチーム)量・風の強さ・時間を細かく指定できる」などの特徴があります。
その為、一流の料理人のような高いクオリティで調理することが可能になります。
実際に、多くの一流ホテルやレストランがスチコンを導入しています。
特徴②:誰が使っても仕上がりが均一
メニューに合わせた事前の設定で調理を開始するだけ。
後は温度や時間の管理等も全て自動で行ってくれるため、シェフからアルバイトスタッフまで、誰が調理しても均一に仕上げることができます。
特徴③:失敗しない
各メニューに最適な温度・蒸気(スチーム)量・送風・時間の設定を見つけることで、食材や下準備を大きく変えない限り、何度繰り返しても理想の味を再現することが出来ます。
1-2-2. 調理効率について
特徴①:ボタン1つで簡単調理
下準備ができたら火加減や時間を気にする必要はありません。
簡単な設定をした後はたった1つボタンを押すだけで調理が始まります。
スチコンが調理している間は別の作業に時間を充てることができます。
特徴②:大量かつ短時間で調理可能
スチコンのサイズにもよりますが、標準的なサイズの機種で10段前後、大型の機種で20段前後のラックが存在し、一度に多くのお料理を調理できます。
しかも、加熱に蒸気(スチーム)を用いることで、一般的なオーブンと比較して短時間で仕上げられます。
食材や調理法、各利用者の状況にも左右されるためあくまで目安にはなりますが、調理時間を10%以上は短縮できたという声が多く寄せられています。
また、調理時間の短縮は電力/ガス代の削減にもつながります。
特徴③:多種メニューの同時調理が可能
例えば、一般的なオーブンでは「15分間調理したいグラタン」「40分間調理したいビーフストロガノフ」「6分間だけ調理したいサバの塩焼き」を同時に調理することは不可能です。
なぜなら、「そもそも容量が足りない」「調理時間を揃えないとオーブンを途中で開けることになってしまう」「匂い移りや味移りが起こる」などの事情があるからです。
しかし、スチコンではこれら調理時間もバラバラな多種のメニューを同時に調理することが可能となります。
「調理途中での開け閉めがOKかどうか」や「匂い移りや味移りへの対策度合い」はメーカーによっても異なります。
しかし、スチコンという機械自体が上記のような調理法を前提に設計されているため、大きな特徴と言えるでしょう。
1-3. スチコンのメリットとは?
スチコンの特徴が整理できたところでこれらが具体的にどのようなメリットにつながるかを確認していきましょう。
提供品質の特徴①②③は「提供品質の向上・安定」や「メニューの幅が広がる」などのメリットにつながります。
メリット①:「提供品質の向上・安定」
飲食店にとって料理の味が評判を左右する事は言うまでもありません。
一流の味を、精度高く、確実に提供できる事は確実なメリットとなります。
また、調理品質が一定に保てるため、技術に不安のあるアルバイトスタッフも調理担当として雇いやすくなります。
実際に有名レストランや外食チェーン、ミシュランの星を獲得する有名料理店まで、味を自慢とする多くの飲食店が導入しています
メリット②:「メニューの幅が広がる」
スチコン1台で様々な調理方法ができるため、今までは「1つのメニューのために機器を購入するのがコストパフォーマンスが悪い」「新たに機器を購入しても置く場所がないからやめておこう」といった理由で挑戦できなかったメニューも提供可能になります。
調理効率の特徴①②③は「提供スピードの向上」「人手不足の解消や人件費削減」「省スペース」「ロスの削減」などのメリットにつながります。
メリット③:「提供スピードの向上」
短時間で大量の調理が可能であり、かつ多様なメニューを同時に調理できるため、提供スピードが向上します。
特に突発的に大量の注文が入りやすいホテル・ケータリング・デリバリーサービスの事業者等にとっては大きな味方となります。
食材や調理法、各利用者の状況にも左右されるためあくまで目安にはなりますが、純粋な調理時間で10%以上の短縮が見込めます。
また、それまでスタッフが行っていた調理をスチコンが担当するわけですから、その時間でスタッフは別の作業に時間を充てられます。
トータルでの提供スピードは更に向上することが考えられます。
メリット④:「人手不足の解消や人件費削減」
上記のような提供スピードの向上に加え、従来の調理まわりの作業が多様であればあるほど、スチコンに一手に集約することのメリットは大きくなります。
こちらもあくまで目安にはなりますが、スチコン1台で従業員1~2人分以上の働きをすると言われています。
人手の確保が難しく、一方で人件費をなるべく抑えたい事業者にとって大変心強い味方となります。
具体的に試算すると、年間300日の営業で時給1,500円で9時間労働の従業員2名を想定すれば、年間で400万円超の人件費がカットできることになります。
他にも電力・ガスや残業・深夜代金、先行投資などの費用削減にもつながりますし、提供品質の向上は売上向上につながる余地があります。
以上の点を考えれば、スチコン導入は収支面でも非常に合理的な投資と捉えることができます。
メリット⑤:「省スペース」
スチコン1台で「蒸し器」「オーブン」「鍋」「フライパン」「焼き台」等多様な調理機器の役目を一手に担えます。
そのため、お店の広さや周りの厨房機器の配置にもよりますが、目安としては平均30%以上のスペースを節約できると言われています。
メリット⑥:「ロス削減」
需要に合わせて柔軟な調理が可能であり、調理失敗も起こらないため廃棄を削減することに貢献できます。
例えばローストビーフなどのお肉料理の場合、加熱調理のムラが起こってしまうことでお肉全体の1割にあたるの端部分を廃棄するケースが一般的です。
メーカーにより加熱のクオリティの差もあるため一概には言い切れませんが、10~15%のロス削減に繋がる場合が多いようです。
2. スチコンの機能を詳しく説明!
次に、上記のような特徴やメリットを実現させる機能について説明していきます。
2-1. スチコンの基本「3つのマニュアルモード」
スチコンとはその名の通り、スチームとオーブンの機能を兼ね備えているものです。
したがって「スチームモード」「ホットエアーモード」「コンビネーションモード」の3つのモードがどのメーカーにも共通の調理機能になります。
・「スチームモード」:蒸し料理向き
・「ホットエアーモード」:焼き料理向き
・「コンビネーションモード」:あらゆる調理法向き、スチコンで最も利用される頻度が高いモード
このモードのうち1つを選択したうえで、「温度」「湿度」「送風の強さ」「時間」の主要な4つのパラメータを利用者自身で設定していくことになります。
例)グリルチキン:温度180°C 湿度70% 風量3 時間10分 など
また大抵のメーカーの機種では、これらの設定を一度利用すると履歴機能やお気に入り機能を使って設定を保存できます。
3つのマニュアルモードが最も基本的な機能になるのですが、レシピごとに「温度」「蒸気(スチーム)量」「送風の強さ」の最適な設定を探し出すのが難しいケースが生じます。
この点を解決してくれるのが次の機能になります。
2-2. ”食材×調理法”で分類されている「オートモード」
こちらはメーカーによっては搭載されていなかったり様式が異なったりしますが、現在のスチコン業界では目を離せない重要な機能であるためご紹介します。
オートモードは、食材を選びその調理法を選ぶと、レシピごとに適切な温度・蒸気(スチーム量)・送風・時間のテンプレートを提示してくれる機能になります。
老舗スチコンメーカーを中心に、その長年の研究成果を結晶化させたものと言えるでしょう。
最適な調理設定を探す面倒さや難しさから利用する飲食店だけでなく、メーカーの長年の経験を信用し積極的に利用する高級店も数多く存在します。
2-3. 付属機能
スチコンの基本となる機能ではありませんが、最新のスチコンに搭載されている着目すべき機能を紹介します。
また、その機能を搭載する主要メーカーも一例として提示するのでご参考にしてください。
・自動調節機能
大抵のスチコンは初期設定を行った後、調理中は一定の温度・蒸気(スチーム)・風力を出力しつづける形式になりますが、一部のメーカーのスチコンは調理中にも各パラメータを自動で微修正しながら調節する機能がついています。
これにより、食材や調理の細かな差異に左右されず仕上がりを高い精度で一定に揃えることができます。
自動調節機能搭載メーカーの例:
ラショナル
・自動洗浄
大掛かりで複雑、そして繊細な機械ですので、洗浄は重要ながら大変な作業になります。
これを自動で行ってくれるクリーナー機能をもつ製品も存在しています。
自動洗浄機能搭載メーカーの例:
ラショナル・マルゼン(一部モデル)・ホシザキ など
・遠隔操作
別デバイスを利用して離れた場所からの操作や観察を可能にする機能があります。
遠隔操作機能搭載メーカーの例:
ラショナル…スマートフォンアプリとの連携
・レシピ相談/提案
スチコンを熟知した担当者にレシピの相談をしたり、レシピの提案を受けたりできるサービスです。
レシピ相談/提案サービス利用可能メーカーの例:
ラショナル
2-4. スチコンで出来ない調理を担う新たな調理製品
ここまでスチコンの機能について解説してきましたが、逆にスチコンができないこととは何でしょうか?
実は、「液体をふんだんに使った調理」がスチコンでは難しい点になります。
より具体的には「茹でる・揚げる・煮詰める」といったレシピです。
スチコンは熱風と蒸気(スチーム)を吹き付けるという原理であるうえに、フランス天板やホテルパンなどの浅いプレートを利用するため、液体を通して集中的に加熱する調理には不向きとなるのです。
それを補うのがラショナル社が開発した「iVario」という機種になります。
スチコンとは形から大きく異なりますが、一言でまとめるなら「マルチな機能を持つ高性能圧力鍋」と形容できるでしょうか。
こちらも多彩な調理を1台で実現する非常に便利な製品になりますので参考にしてみてください。
3. まとめ
ここまでスチコンの定義・特徴・メリットから詳しい機能までご説明してきました。
如何だったでしょうか?
スチコンについて詳しく知るきっかけになれば幸いです。
当サイトでは引き続き、他にも「スチコンの価格ってどれくらい?費用対効果は見合うのか」「スチコンを中古で買うのはあり?なし?」「スチコンの種類は?電気とガスはどちらがよい?」「スチコンの使い方は?」「スチコンで作れるレシピは?」といったスチコンや加熱調理についての疑問に答えて行きます。
スチコンについての基本情報を抑えたうえで導入を検討することで、より適切な判断につながりますので、引き続き是非ご覧ください!