「スチコン」という厨房機器をご存知ですか?
スチコンとは正式には「スチームコンベクションオーブン」という名称になります。(※)
熱風と蒸気(スチーム)を組み合わせた加熱方法であらゆる加熱調理を可能にする機器です。
※スチームコンベクションとは、「蒸気(スチーム)を環流(コンベクション)させる」という意味です。
具体的には、蒸す・焼く・煮る・炒める・温める・茹でる・揚げる など加熱調理の約90%を1台で完結することができます。
たとえるならスチコンは「加熱調理の何でも屋」と言えるでしょう。
・「固定費を削減したい…」
・「人手不足をなんとか解消したい…」
・「通販やデリバリーを始めて新たな販路を開拓したい…」
このような悩みをお持ちの食品事業の経営者がこぞって業務用スチコンに注目しています。
しかしながら、スチコンの価格をわかりやすく解説しているサイトはあまり存在しません。
価格比較サイトでは中古品が混じっていたり、そもそも機種間の価格比較が難しかったり…
そこで、スチコンを徹底研究してきた当サイトが、そんなスチコンの「価格」に特化して、価格帯からメーカー比較、機種別の価格変動や投資対効果まで解説していきます。
目次
1. スチコンの特徴とメリットを確認!
業務用スチコンの価格について確認する前に、スチコンの特徴とメリットを確認しておきます。
価格とメリットを両方把握することで費用対効果を意識していきましょう。
1-1. 特徴は?
特徴① 提供品質について:
一流シェフの高クオリティを、誰でも、均一に!
スチコンは、熱風に加え蒸気(スチーム)を用いて加熱します。
これにより「短時間で高温で焼き上がる」「食品の水分を保つ」「温度・蒸気(スチーム)量・時間・風の強さ等を細かく設定できる」等の特徴があります。
各レシピに最適な設定をセットして開始ボタンを押すだけで、予熱管理から庫内温度・芯温の管理まで全て自動で行ってくれます。
このため、シェフからアルバイトまで誰が調理しても均一に、高いクオリティで調理出来ます。
実際に、多くの一流ホテルやレストランが業務用スチコンを導入しています。
特徴② 調理効率について:
ボタン1つで大量・短時間・多品目の調理が可能に!
スチコンはサイズにより5段~20段前後のラックが存在し、同時に大量調理ができます。
しかも、加熱に蒸気(スチーム)を加えることで通常のオーブンと比べ短時間で仕上げます。
各利用者の状況にもよるためあくまで目安にはなりますが、調理時間を10%以上短縮できたという声が多く寄せられています。
加えて、スチコンでは「15分調理したいグラタン」「40分調理したいビーフストロガノフ」「6分調理したいサバの塩焼き」等、調理時間もバラバラな多種のレシピを同時に調理可能です。
簡単な設定の後はボタンを押すだけで調理が始まります。
スチコンの調理中は別の作業に時間を充てられます。
1-2. スチコンのメリットとは?
スチコンの特徴を整理したところで、これらがどんなメリットに繋がるかを確認します。
メリット①:「人手不足の解決や人件費の削減」
業務用のスチコンの生産効率は凄まじく、あくまで目安になりますが、スチコン1台で従業員1~2人分の働きになると言われています。
従業員2名分の労働時間削減を想定すれば、年間で400万円超の人件費がカットできることになります。
これを踏まえると、スチコン導入は半年〜1年で十分回収できる合理的な投資と捉えられます。
メリット②:「提供品質の向上と安定」
飲食店やホテル、スーパーにとって一流の味を精度高く提供できる事は大きなメリットです。
また、提供品質が安定することで、アルバイトスタッフも調理担当として採用しやすくなります。
メリット③:「メニューの幅を広げられる」
スチコン1台で様々なレシピを調理できるため、これまで「1つのレシピのために新たな機器を導入するのはコスパが悪い」「導入しても置くスペースがない」といった理由で挑戦できなかったレシピも提供可能になります。
メリット④:「提供スピードを上げられる」
短時間で大量調理が可能で、多様なレシピを同時調理できるので、提供スピードの向上が見込めます。
特に急な大量注文が入るホテルやケータリング、デリバリーサービスの事業者にとっては大きな味方となります。
2. ズバリ価格帯は?メーカーや機種別の価格も比較!
それでは肝心の価格について確認していきましょう。
まずはざっくりと価格帯を把握し、その後でメーカーやタイプごとにどれくらい価格が変動してくるかを詳しく抑えていきます。
2-1. 大まかな価格帯の把握
業務用スチコン主要メーカーの価格帯を、最も一般的な「ホテルパン1/1(いちぶんのいち)サイズ」についてまとめました(2021年現在)。
6段(小型サイズ)と10段(標準サイズ)の主要3メーカーの価格を一覧にしています。
業務用スチコンのサイズは全メーカー共通で
・幅と奥行き…ホテルパンのサイズ
・高さ…何段重ねられるか
で表記します。
ここからわかる通り、業務用スチコンのメーカー標準価格は、
・6段タイプ(標準サイズ)は210~240万円(税込)
・10段タイプ(大型サイズ)は290万円〜310万円(税込)
が一般的な価格帯になります。
そのほかにも20段タイプやガス式の価格も含めて一覧にした価格表を掲載しておくので参考にしてください!
2-2. スチコンの機種と価格
メーカー比較と大体の金額感の把握が済んだところで、より詳細に機種別の価格を見ていきましょう。
スチコンの機種は以下の4つのポイントで分類されます。
形式 | 電気式 or ガス式 |
ホテルパンサイズ | 2/3 or 1/1 or 2/1 など |
段数 | 6段 or 10段 or 20段 など |
グレード | 上位シリーズ or 下位シリーズ |
2-2-1. 形式
電気式かガス式で選択することができますが、一般的なのは電気式です。
価格もガス式だと1.1倍~1.2倍ほど高くなります。
2-2-2. ホテルパンサイズ
メーカーにより異なりますが、写真のような標準的な1/1サイズのホテルパン以外にも、2/3サイズや2/1サイズの機種を用意している場合があります。
2-2-3. 段数
ほとんどのメーカーが6段・10段・20段の機種を揃えています。
一部メーカーでは5段や7段の機種を用意していたり、20段の機種を用意していなかったりするので、実際に確認してみてください。
主要メーカー平均で、10段タイプは6段に比べて1.2~1.4倍、20段タイプは6段タイプに比べて2.1~2.3倍の価格になるようです。
2-2-4. グレード
各業務用スチコンメーカーとも機能の充実具合により上位シリーズと下位シリーズに分けて販売しています。
こちらも主要メーカー平均で、上位シリーズは下位シリーズの1.1~1.4倍の価格に設定されています。
各業務用スチコンメーカーのシリーズ一覧:
ラショナル | 上位シリーズ:iCombi Pro 下位シリーズ:iCombi Classic |
マルゼン | 上位シリーズ:エクセレントシリーズ 中位シリーズ:デラックスシリーズ 下位シリーズ:スタンダードシリーズ |
ホシザキ | 上位シリーズ:ハイグレードモデル<Sクラス> 下位シリーズ:スタンダードモデル<Aクラス> |
タニコー | 上位シリーズ:ベーシック 下位シリーズ:デラックス |
2-2-5. 価格の変動
下の図では、各ポイントごとにどれくらい価格が変化していくのかを一覧にしてみました!
上位機種のスチコンを選ばれる方が一般的なので、こちらをベースに「各タイプにするとだいたい価格がどれくらい変わるか」を示したものになります。
ご参考にしていただければ幸いです!
スチコンの機種選定においては、「同じ形式」「同じサイズ」「同じ段数」の機種に着目し、メーカー間で価格を比較すると非常にクリアになります!
是非参考にしてみてください。
2-3. ちなみに…
以上の価格帯を見て「正直、高い!」と思われたでしょうか?
「これだとちょっと手が出しにくいな…中古なら安くなるだろう!」と考えられる方もいらっしゃると思います。
しかし、中古のスチコンはおすすめしていません。
また、スチコンを導入されるお客様の多くが新品を購入されている事実もあります。その理由については
でご説明します。
2-4. スチコンの価格を調べる時の注意点
ご自身で他の価格サイトを調べられることもあると思いますが、その際に是非注意していただきたい点をまとめておきます!
①家庭用との区別
小型の業務用スチコンをお探しの場合は、家庭用のスチコンが検索結果に紛れ込んでいる可能性があります。
外見では違いはないように見えても、業務用とは機能も価格も全くの別物になりますので注意してください!
②工事費用や設備会社も必ずチェックする
既に触れましたが、スチコンの導入には必ず搬入・設置の工事費用が伴います。
機械単体の値段だけでなくトータルでの検討を徹底しましょう。
また、工事を行う設備会社の設計や施工が悪いと思ったような利用ができなくなるケースもあります。
信頼できる設備会社と提携しているメーカー/代理店を選ぶのがおすすめです。
3. 費用対効果でスチコン導入を考える!
値段だけ見ると「正直高い!」と思われる方もいるかもしれません。
しかし、スチコンを導入することによって得られるメリットを考えれば、
短期間で回収可能な十分合理的な投資と見ることができます。
以下では、業務用スチコンを使用されている某グリルレストラン様の数値を参考に、2パターンのモデルを想定します。
効果に関しては、業務用スチコンの世界シェア50%を超えるトップシェアのラショナル社「iCombi Pro(1/1サイズ、10段)」の数値を参考にしています。
1つ目は「スチコンの導入で効率化が進み、パートの人件費1名分を削減できた」パターン。
2つ目は「人件費は変動しないが、社員が企画や集客などの仕事に専念することができ、収益拡大に繋げられた」パターンです。
前提として同店は、営業時には社員3名・ロングタイムのパート2名・ショートタイムのアルバイト2名の体制で稼働し、ランチタイムからの営業で月商600万円ほどです。
ランニングのコストはほぼ電気代(あるいはガス代)のみになりますが、導入前と比較すれば節約につながるため今回は想定しません。
ケース①:人件費を中心としたコストの削減
スチコンを導入し「”夜間モード”を駆使して仕込み時間を短縮」「”複数同時調理機能”を使って提供速度が向上」などの効果で約1人分の作業が削減できたとします。
一般的に”スチコンは1~2人分以上の働きをする”と言われていますから、十分現実的な範囲です。
また、業務用スチコンは様々な加熱調理を集約するので空調代の節約に繋がるうえに、ラショナルの「iCombi Pro」の自動調理機能によって節電効果も期待できます。
ムラなく焼き上げられることで食材ロスの減少も見込めます。
生産性の向上や提供品質の向上による売上への影響も加味して、コスト削減効果は合計で月々43万円ほどになります。
これは、購入費用を7ヶ月目に回収できることを意味しています。
ケース②:社員の集客業務への転換
今度は、労働時間や人員削減は行わずに、社員(シェフ)が調理から離れ企画や集客に集中できるようになった場合を想定します。
このおかげで徐々に集客を増加させるに成功し、1年で月商を100万円伸ばせたとします。
飲食店の集客はノウハウが確立されている傾向にあり、過去の事例を踏まえても現実的な設定と言えます。
この場合、購入費用を8ヶ月目に回収できるという結果になりました。
あくまで一つのモデルを示したにすぎませんが、具体的なイメージを持っていただくことに貢献できていれば幸いです。
導入後のメリットをしっかり想定できていれば、スチコン導入は魅力的な投資であると言えます。
4. 「正直高い!」と思われた方へ、おすすめの価格対策
スチコンの導入は投資対効果で考えれば高いハードルとも言えません。
それでも、初期費用は小さくないので「もっと安く導入できないか?例えば…中古やレンタルは?」と考える方もいらっしゃると思います。
ですが、結論から言うと中古品もレンタルもおすすめしていません。
おすすめできるのは補助金とリースです。
4-1. 中古品がおすすめできない理由
ヤフオクやメルカリなどのサイトに中古品が出品されていますが、以下の理由からおすすめできません
①故障リスクや信頼リスクがある
スチコンは適した手入れが行き届いていなければ故障リスクが増大します。
カルキ抜きやフィルターの掃除を疎かにされていると、基盤など部品の修理が必要になる場合があるのです。
コスト削減に貢献できるのが強みであるスチコンによって修理費用が発生してしまっては元も子もありません。
また、そもそもサイトに出品されているということは売れ残りであるということの裏返しです。
高い買い物だからこそ顔の見える相手から購入されることをおすすめします。
②工事費用込みでの想定・見積もりが不可能になるから
業務用スチコンの導入にあたっては、200Vの高電圧や大量の蒸気(スチーム)を排出するための通気口など設備費用が発生します。
厨房レイアウトや施設の環境にも配慮が必要なため、スチコン単体でのネット購入自体にリスクが伴うのです。
③最新機種を導入することのメリットが大きいから
業務用スチコンは厨房機器の中でも日々進化が著しい機械で、加熱方法やレシピの蓄積などについて最新機能が登場しています(2021年現在)。
品質も効率も変わってくるため、最新機種の導入が圧倒的におすすめできます。
4-2. レンタルがおすすめできない理由
そもそも、スチコンのレンタルを手掛ける会社がほぼ存在していないと言えます。
業務用スチコンほど大きな機械は輸送費・管理費・処理費用が大きな負担になるため、純粋なレンタルのモデルはビジネス上成り立ちにくいという事情があるのです。
レンタルを標榜する企業は存在しますが、その実はリースと変わらなかったり、リースの3倍近い料金が設定されている等おすすめできるものではありません。
4-3. 補助金がおすすめできる理由
補助金の活用はおすすめできる手段になります。
現在なら中小企業庁実施の「ものづくり補助金」や経済産業省実施の「事業再構築補助金」などが利用できます。
スチコンだけでなく他の必要機材や施工とも抱き合わせにできる場合もあるため、販路拡大や業態転換などのタイミングで利用される方も多いです。
弊社では補助金の申請サポートも行っておりますので、ご興味のある方はお問い合わせください!
4-4. リースがおすすめできる理由
初期費用を抑えていきたいならレンタルよりもリースをおすすめします。
合計費用もレンタルに比べ良心的な傾向にあるうえに、思いのほか重くのしかかる輸送・処理の費用をリース会社が負担してくれます。
5. まとめ
如何だったでしょうか?
業務用スチコンの値段感を確認した後に、投資対効果では非常に優秀な投資であると言えること、初期費用が高いと感じた場合は中古やレンタルではなく補助金やリースを活用した方がいいこと、などを説明してきました。
しかし、価格だけで判断するのではなく、実際に実機を触ってみたりご自身のメニューを調理してみるなどの実践を重ねてからの判断をおすすめします。
弊社の方で実演会なども実施していますので、ご興味があれば是非お問い合わせください!
最後までお読みいただきありがとうございました!